古代コインは投資に向いているのか?落札実績で分かる本当の投資価値

古代コインは投資に向いているのか?落札実績で分かる本当の投資価値

今回は代表的なコインオークションであるHeritageAuctionにて、以前の記事で紹介したリディア王国の金貨と、アレキサンダーの金貨の落札実績を追うことで、その投資的な価値があるかを調査してみました。

リディア王国クロイソス王スターテル金貨の投資価値

そもそもHeritageAuctionでの過去出品コインとして確認できたのは、わずか5点のみ。その希少性が伺えます。

それぞれの落札実績は下記のとおりです。

簡易化のために、8gのライトシリーズをライト、10gのヘビーシリーズをヘビーと記載し、Strike,Surfaceの表記は /5 を省略し、分子のみの記載としています。

$35,250 ライト AU 4,4  in 2017/4
$54,050 ヘビー XF 5,4 in 2016/8(prototype issue=試鋳貨か?)
$17,625 ヘビー MS★ 5,5 in 2016.1(スラブ写真なし)
$35,250 ライト Ch MS★ 5,5 in2015/8
$18,400 ライト Ch XF ?,?  in 2012/3(Strike,Suface記載なし)

そもそもまずライトとヘビーの違いがあり、そしてグレードの違いがあり、さらにスラブ写真の有る/無しで、その信用度も違うため、これだけの実績数では何とも判断が付かないのが正直なところです。

2017年と2015年で、ライトシリーズが共に$35,250で落札されています。一見、昔よりグレードが低いものが同価格で落札されているため、この金貨の取引相場は上がっているように見えますが、その場の空気や競り具合で価格が吊り上がることも多いオークション、これだけの点数では一概に判断できないでしょう。

マケドニア王国アレキサンダー3世スターテル金貨の投資価値

続いて、HeritageAuctionにおけるアレキサンダー金貨、約160点の落札実績を見ていきます。

Fine, VeryFine, ExtremelyFine, AboutUncirculated, MintState、と多種多様なグレードが出品・落札されていました。

全体的には2010年以前は、(裸コインの出品が多く、グレードが不明確ですが、)$1,000~$2,000で取引されていたものが、この3年間はAUグレードで$3,000~$5,000ほどで取引されているため、約10年前と比べると、スラブの有無の価格差を考慮しても、若干取引価格が上がっているように思えます。

また、Choice MSやGem MS、FineStyle付きなどの、状態の非常に良いコインが、今年2018年1月のオークションで4点も出品されており、10年前と比べて状態の良いコインが出回る市場環境になってきている印象です。

今回はMS以上のグレードを中心に調査、比較検討を行いました。

結論から言うと、「同グレードでも価格が下がっているもの、上がっているものがあり、またコインごとのデザインやバランスによっても価格が大きく異なるため、こちらもグレードだけでは一概に価格推移を読み取れない」という結果となりました。

ただ、少なくとも「非常に状態の良いものは、最低限のラインの価値は担保されているように見える」ため、極めて高グレードのコインを所持すれば、保全としての価値・意義は十分にあると言えるでしょう。

「非常に状態が良い」というのは、ChoiceがつくかFineStyleが付くか、といったことよりも、全体的なデザインやバランスの良さによっているようです。

古代コインの代表的な落札実績

$9,600 Ch MS 5,5 FineStyle in2018/1
$33,600 Gem MS 5,5 in2018/1(最高鑑定!)
$12,000 Ch MS 5,5 FineStyle in2018/1
$28,800 Ch AU 5,5 FineStyle in2018/1(バランス良し)

$9,987 Ch MS 5,4 in2017/8
$15,275 Ch MS 5,5 FineStyle in2017/4
$17,625 MS★ 5,5 in2017/1(非常に綺麗)
$11,162 Ch MS 5,5 in2017/1

$6,462 MS★ 5,4 in2016/8
$9,987 MS★ 5,5 FineStyle in2016/8(裏面90°傾き)
$11,162 Ch MS★ 5,5 in2016/1

$8,225 Ch MS 5,5 in2015/4
$15,275 MS★ 5,5 FineStyle in2015/1
$11,750 Ch MS★ 5,5 FineStyle in2015/1(傾くも綺麗)

$10,575 Ch MS 5,4 FineStyle in2014/9
$16,450 Ch MS 5,5 in2014/9(バランスよし)
$15,275 MS★ 5,5 FineStyle in2014/8
$12,925 Ch MS 5,5 FineStyle in2014/8
$25,850 Ch MS 5,5 FineStyle in2014/1(非常に綺麗)

$24,675 グレード不明 in2013/10

黄色マーカーはCh MS 5/5, 5/5 FineStyleの全くの同グレード。
赤字はMSグレードで、 ノーコメントのものに付与しています。

全体を眺めていても、なかなか価格の推移が読みづらいですが、
まず黄色マーカーだけを追ってみると、直近では取引価格が下がってきているように見えます。

また、若干主観も入るでしょうが、見た目的にバランスが良かったり、「綺麗」と感じるような状態だと価格が跳ね上がる傾向にあるようです。

逆にコインが傾いている(表面と裏面で肖像の傾きがずれている)ようなコインだと、落札価格は下がってしまう傾向にあるようです。

そこで、赤字を付したノーコメント、つまり「可もなく不可もない」、平均的な品質と思われるコインだけを比べて、価格を追っていってみると、$8,000〜$13,000くらいの価格を保っているように見えます。

そのため、このコインの全体的な価格推移としては、多少の上下動はあるものの、概ね価格帯を保っている(保全)と言えるでしょう。

しかし、前述したように、グレード以外のコインのバランス、傾きによって、価格が非常に高くも低くもなるため、購入するのであれば、「よりバランスが良く、表面と裏面で傾きの差がないようなもの」を選ぶと、保全+先々高値がつく可能性もあると言えるでしょう。

こういった特徴から、このコインの落札実績の推移を見る限り、価値基準の選定が難しく、またそれを知る人も少ないため、売買を前提とした投資には向いていないのが正直なところでしょう。

ただ、一概に「投資に向かない」とは言えない
今回はリディア王国スターテル金貨と、アレキサンダー大王の金貨のみにフォーカスして調査をしましたが、他にもアウグストゥスやネロ帝、シーザーカエサルのコインなど、様々なコインが存在します。
そういった有名な皇帝のコインには熱狂的なコレクターも多いため、物によっては取引価格が上昇する、ということもあるでしょう。

また、映画『テルマエロマエ』が有名になったとき、その中で出てきた古代コインが、一時的に価格上昇した、という話もあります。
そのような時代の機会や流れを読むことで、投資的に利益を得られる可能性は、人気という“人間の欲求”がある限り、決してゼロではないでしょう。

今回は特にグレードやオークション価格を元に、1つのコインを通して、「古代コインが投資に向くか」を検討しましたが、非常に値動きが読みにくい、というのが全体を通した古代コインへの印象です。

こういった分析の難しさも、投資的に向かないひとつの要因だと思われますが、そもそも「古代コインをよく知らない」という人が多数派であり、ある種マニアックな趣味の領域が大きいということも、古代コインと投資を遠ざけているでしょう。

しかし、だからと言って古代コインが価値がないということは決してなく、むしろその歴史の重み、何十世紀もの時を跨いで今に現存しているというロマン、こういった点は他の数百年前に発行されたコインには持ち合わせない魅力です。

アンティークコインの醍醐味は「趣味にもなる資産運用のツール」であること。投資にはあまりおすすめはできませんが、保全・資産分散という役割のもと、ポートフォリオに組み込み、かつ趣味として大いに古代コインの素晴らしさを享受していただければと思います。